俺の故郷ではウェルメイドなセメントが採掘される。

三重県の最北端から呟くサブカルとフィロソフィ、最新のブライダル事情と生まれ来る息子について。

百円の恋

日本4大女優の一人、安藤サクラ(ちなみにあと三人は満島ひかり池脇千鶴大島美幸)が最高の演技を披露した本作。
和製「ミリオンダラー・ベイビーの前半」としてかなりの興奮を禁じ得ない。

安藤サクラだからこそ、ここまでの作品になった。素晴らしい幾つかの韓国映画は顔面力がポイントになっているが(ソン・ガンホを筆頭に)、この映画は負けていない。

社会の底辺描写の上手さは「そこのみにて光り輝く」に近いリアリティがあるし(ちょっとやり過ぎ感は否めないが)、映画の前半と後半での身体的変化が素晴らしい。映画にはイニシエーションが必須だと改めて感じる。

最後の微妙な長回しと、何度も繰り返されるテーマ曲に一抹の不満はあるが、そんなことは関係ない。

安藤サクラを初めて見たのは2009年の、みんな大好き「愛のむきだし」。「かぞくのくに」も良かった。しかし、女優力爆発の本作は失敗作になりかねない不安要素を全て、一人の演技力でカバーしている。

とにかく表現を生業としている人はこのプロ意識を観るべきだし、感化されるべきだ。

これまた2ヶ月になる息子を抱きながら劇中2回叫んだのち、いつの間にか眠っていた息子をベッドにそっと置き、鑑賞後久々の腕立て伏せを行なった。

安藤サクラさん、ありがとう。

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福福荘の福ちゃん

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私の最も尊敬する女芸人である森三中の大島さんが、奇しくも我が息子と4日違いで女の子を出産された。その出産の様子を自分の顔に向けて取り付けたCCDカメラで撮影し放送したことが、ネット上で大きなトピックとなった。

大島さんはただ者ではない。この映画「福福荘の福ちゃん」を見ればどれだけ才能溢れる女優であるかがわかる。私の中では満島ひかりに匹敵する演技力だ。

藤田容介さんの過去作は不勉強ながら未見だが、器用な監督だという印象を持った。時間経過の表現がスムーズで見易い。
特に仕事中屋上でペンキローラーを左手に遠くを見つめる福ちゃんの映像。その一枚だけで前後の相反する感情を結び付ける。

福ちゃんの趣味である凧揚げがまさか重要な伏線になっていることには驚いた。
沼倉ヒサシを筆頭に、演歌歌手を目指す後輩、ヒロインの友達、アパートの住民など、脇役もしっかりとハマっている。邦画コメディでこれほどキャラが過不足なく配置されている作品も久しぶりだ(やりたいことはわかるけど結構上手くいってないことが多い)。

とにかく、大島美幸さんは最高のアーティストだ。芸人の企画物映画だと勘違いしてはいけない。
だから私はリチャードホールの「おどやん」を怪演していたころからヤバいと言い続けてきただろ!

生後2ヶ月の息子を抱きながら、久しぶりに観た映画は文句なしの歴史的作品だった。

衣裳合わせ。

結婚式の準備に於いて、まず新郎新婦間の摩擦が起こる場面はおそらく「衣裳合わせ」である。

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式場選びまでは二人とも程良い変性意識状態でこなせる。しかし、挙式約半年ほど前に設定されるドレス選びで温度差が浮き彫りになる。

希望に満ち溢れた新婦があれこれと選び、試着し、少しばかり髪型を合わせて、写真を撮る。
ドレス、白無垢、色打掛。ちょっと引き振袖も着てみようかしら。

考えれば分かる。デートで買い物に出掛け、デパートで試着を繰り返す彼女をソファで待つ彼氏の表情は曇っているではないか。
新郎は先程試着したドレスとの違いもよく分からなくなり、早く終わらないかな、、と言う禁句を呟く。
ここから問題が大きくなり始める。

この件を難なくクリアするポイントはただ一つ。


新郎が「思ったことを言わない。」ことだ。

ただ無心に(メディテーションを繰り返し)試着完了を待ち、写真に収める。だけである。
新婦もあれこれ着ている為、基本軸が次第にぶれてくる。そこに新郎が真面目に意見するとさらにブレる。

結婚生活の全てが、否、人生の縮図がこの衣裳合わせの数時間に凝縮されていると大袈裟に言っても、頷く経験者が少数であれいるのは確かだ。

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ラッシュ→デスプルーフ→テレクラキャノンボール。

iTunesでお気に入りのプレイリストを作る際、あるテーマを想定する。例えば、50年代JAZZとかブラジルとか変拍子とか。
この考え方を映画に応用すると、まず「爆走系」と言うキーワードが思い浮かぶ。私は全く車やバイクに興味が無い。しかし、爆走するシーンが面白い映画は好きだ。
まず最初に「ラッシュ プライドと友情」を観ておく。F1の世界を舞台にした主役二人のライバル関係が多彩なアングルで表現されている。実話を元にした傑作だ。
次に「デスプルーフ」を観る。タランティーノがファスターキャットプッシー&キルキルを下敷きに撮った作品。デイヴ・ディー、ドジー、ビーキー、ミック&ティッチのホールド・タイトとエイプリルマーチのチック・ハビットが最高だ。
そして最後に「テレクラキャノンボール2013 劇場版」で締める。
カンパニー松尾監督他、出演者の男気に涙が出る。俺は本気で泣いたし、2014年で一番笑った映画だ。

以上の三作は、愛読書映画秘宝でももちろん年間ランキングに入ったものばかり。これらを観ずして映画好きを語るのは恥ずかしいことだ。

断っておくが「テレクラキャノンボール」だけは、一人で見た方がいい。まさか付き合いたてのカップルなんかで観た日には、すぐ別れるか一層愛が深まるかのどちらかだ。
さらに、しばらく御飯が美味しくなくなる。

しかし、奇しくもカンパニー松尾が出ている本作と「監督失格」は、両方とも私のオールタイムベストに入っている。
何か縁を感じる。

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ブライズメイド。

結婚式を舞台にした映画は数多くあるが、面白くないものが多い。そんな中で「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」は、きちんと仕上がっているものの一つだ。
日本にはあまりないブライズメイド(花嫁介添人)という風習が、巻き起こる事件の元になる。
ポップなジャケットに似つかわしくないえぐいシーンもあるし、主人公がこれでもかと言うドン底を体験する。
傑作「ハングオーバー 消えた花婿ムコと史上最悪の二日酔い」を彷彿とさせる女版ブロマンス映画。その奥から、何者にもなれなかった(心の中ではまだイケるってちょっと思ってる)青春の感触を忘れられない素敵な気持ちが顔を出す。
名作には不可欠なイニシェーションという要素が、大袈裟なやり方で語られている。
結婚するということは、、という結論の出ない論争はさておき、プロデューサーである下品帝王ジャド・アパトーの世界に潜ってみてはいかがでしょうか?

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LGBTとレゲエとか。


加藤ミリヤのぶっ飛んだ写真が一部で話題になっている。彼女は恋愛依存体質系女子をレペゼン(確か友達や母親に感謝する系ラッパーと共演してるので使いました。ご存知の通りrepresentのことです。)する女王有るまじき風貌でネット民からディス(ご存知の通りdisrespectのことです。)られています。
椎名林檎無罪モラトリアム系女王の方が素晴らしいです。
加藤さんは、はっきり言って全く可愛くないですし、曲も聴き分けることができません。ついでに母に感謝系のラッパー、湘南のなんとか辺りももうそろそろ限界ではないでしょうか(オヤジに感謝ってのはあまり聴いたことないな。)。
知っている子数人が大変なミリヤーで、LIVEも行くわ曲もかけるわ、文化的バックボーンを疑いましたが。それはそれで、ミリヤ側のマーケティング対象ド真ん中ですので仕方がないことなのです。
さらにさらに、昨年と今年のグラミー賞ではっきりしたようにヒップホップやレゲエでbatty manとか言ってる時代では無くなってることに日本の現場は気付いているのでしょうか。
私の知る限り、ジャズドミュニスターズだけです。分かっているのは。
話が前後しましたが、コモディティー化された真似事の作品などをなるべく避けて、清らかな実りある芸術に触れて生きていきたいものです。
食事や良質の睡眠、水が大切なように何を視聴覚として捉えるかはとても大切です。
生まれてくる子供にどのような芸術作品を与えていくのか、毎日脳内で取捨選択しています。
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本日はお日柄も良く。

結婚式のお日柄ってやつ、どこまで気にしないといけないのだろう。

古臭いカレンダーを見ると普段目にしない不思議な漢字を見つける事がある。それがお日柄。
六曜は基本、赤→勝→友→負→仏→大の順で巡る。冠婚に良いとされる順に並べると、大安→友引→先勝→先負→赤口→仏滅。
大安吉日。良い事は友を引く。午前が良い。午後が良い。正午付近のみ良い。仏が滅びる、、

結婚式場は基本、大安の昼頃から予約が埋まっていく。早い夫婦で1年半前から申し込むこともある。
良いお日柄がもう空いてない!状況になると、機転の効くプランナーは十二直や二十八宿で見てみましょうと言い出し落とし所を見つけ出す。

すべての日には「〜の日」というのがある。7月6日はピアノの日、とか(1823年シーボルトが初めて日本へピアノを持ち込んだ)。
かなり強引なこじ付けもあるが趣味嗜好と合う日があるかもしれない。

昔よりお日柄に対するこだわりは希薄になっているものの、とはいえ、まだ気にする世代が生きて列席する可能性があるわけです。
おばあちゃんが「こんな日柄の日に大丈夫じゃろか、、」とぶつくさ言いながら列席するのはいかがなものか。

演出やMCで、なぜこの日を選んだのかというフォローを含ませるのも良い。

個人的にはこう思う。
複数の式を受け入れる式場の場合は多忙が予想される大安・友引を避ける。まず、付き合った記念日なんかを優先させ、日取りが決まったら年配の濃い親族にはすぐさま報告を入れておく。クレームが出た際、申し込んでいたとしても日取りの変更は空いている限り可能だ。
そして、仏滅は避ける。

気にしなくなったとはいえ、仏の滅びる日に神仏へ生涯の愛を誓うのはどうか。結婚生活がどーにかなってしまった時、シャレにならない。
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